2019.01.24更新

悪名高き性病の梅毒とは

梅毒は日本では「花柳病」と呼ばれるほど昔から人々に恐れられてきた性病です。
数年から数十年かけて全身で症状が進行し、末期には脳や中枢神経や全身の大血管などに病巣が拡大し、麻痺や精神的変調などをきたし最終的には死亡の顛末をたどります。
晩年に精神に異常をきたしたとされる哲学者ニーチェも、梅毒に罹患していたと推測されているほどです。

長年、人類の脅威と認識されていた梅毒も、抗生物質の登場により完治する病気となりました。
第二次大戦後も一時的な流行を見せることもありましたが、一貫して減少傾向が続いていました。
ところが最近では梅毒患者数が急増しており、先天性梅毒患者も増加するなど、公衆衛生上の脅威として衛生当局にも認識されています。
梅毒について改めて基礎的認識を得ておきましょう。

梅毒は、梅毒トレポネーマが原因菌の感染症の一種です。
感染経路は性行為や性的接触を伴う典型的な性病です。
主に性器やその周辺の粘膜に感染していますが、感染した粘膜同士が接触する限り、口腔などにも感染するリスクは存在します。
3週間ほどの潜伏期間を経て、性器に小さなデキモノが発生することから始まります。
原因菌が増殖して血流に乗って感染範囲が広がるので全身の皮膚にも発疹が見られるようになり、潜伏期間の3週間の他に3ケ月・3年の期間が病気の進行を図るときの目安になるのです。

梅毒の進行具合は病期で表されます。
感染から3週間後の痛みのない小さな発疹が見られる時期は1期となりますが、さらに3ヶ月ほど経過すると性器だけでなく手のひらや足の裏にも赤茶色の湿った発疹が見られるようになります。
全身に「バラ疹」と呼ばれる特徴的な円形の赤いあざも出現します。

さらに進行して、3年ほど経過すると皮下組織にゴム腫と呼ばれる腫瘍が観察されるようになるわけです。
しばしば自壊し、鼻などに出来ると著しい容貌の変化をもたらします。
最末期の4期は心臓や中心系などの症状が発現してきます。

梅毒の検査方法と治療方法

性病を完治させる為には原因菌に応じた治療が必要なので、検査によって梅毒感染を確定させる必要があります。
その検査方法には病変部から直接菌を採取する方法と、血液を採取して血清額的検査をする方法の2つがあります。
前者の採取法はしこりや発疹などが見られる性器病変部から分泌液を採取し、顕微鏡下で菌を検索する方法になります。
後者の血液採取は、血液中の梅毒トレポネーマに対する抗体を検出して感染の有無を判定するというものです。
実際には血液血清検査によって診断が下されることが多いです。

治療薬が開発されない時代には、病状の進行に伴いしばしば身体的変化が生じることも関係して梅毒は非常に恐れられていました。
そのような様相を一変させたのはペニシリンを嚆矢とする抗生物質の登場にあります。
ペニシリン系抗生物質は細胞壁合成阻害薬に分類されるもので、細胞壁の合成に関与するペプチドグリカンの生成を阻害し、殺菌的に作用を発揮します。
抗菌剤は下人菌以外の腸内細菌などにも作用するので、腸内環境にダメージが波及し下痢などの副作用を持つものが多いです。
ペニシリンが作用する菌の種類はあまり多くないのでこういった副作用のリスクが相対的に低くなっており、現在でも梅毒治療の第一線で使用され続けている抗生物質になります。

海外ではペニシリンを主成分にした筋肉注射が標準治療になっていますが、日本国内では現在承認されていません。
そこでペニシリンを含んだ錠剤を2週間服用する治療が行われることが多いようです。
ペニシリンは比較的副作用は少ないとされていますが、吐き気や下痢などの消化管症状が出ることがあります。
特にペニシリンショックと言う急激なアレルギー症状は深刻な副作用と認識されています。